小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night19 刻は夕暮れ。簀子縁では篝火を吊るす用意が始められた。夕闇が急速に進み、客人も徐々に入れ替わっていく。岩城本家から来た女性や子供たちも楽しいひと時を過ごしたと満足そうに帰っていった。 夜の客人は、宮廷の大臣や有力貴族、豪族たちである。ぞくぞく... 2020.04.12 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night18 からっと晴れた空と同じで、今日は実言と礼にとっては晴れがましい日になった。以前から建設していた実言の邸が完成し、今日はそのお披露目の日なのだ。 季節は夏から秋へと変わる時に、木の香が芳しい新居に実言の父の園栄はもちろん、兄弟やその子供たち、... 2020.04.06 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night17 男の後ろについて庇の間に入ると、別の侍女が現れて男の腰に下がった刀を受け取った。身軽になった男は部屋の奥に進んで、几帳の中に入って真ん中に座った。「そなたもここへ座れ」 男の傍の円座を示されて、朔はおどおどと部屋の中に入ってそこに腰を下ろし... 2020.04.01 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night16 朔は、哀羅王子が宮廷内の春日王子の館につながる渡殿を渡って、館から遠ざかるのを見届けてから、その渡殿を逆に、春日王子の館に向かった。館の入口には、春日王子に仕える侍女が待っていて、朔の侍女を促して別室へと連れて行った。朔は一人で、長い簀子縁... 2020.03.30 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night15 その日も、実言は左近衛府の将監として、宮廷の警備の任務についていた。詰所に同僚たちと詰めていると、陽明門から内に入ろうとする貴人を見つけた。すぐに、その人は哀羅王子だと分かった。供を一人も連れておらず、門の前に立っているのだ。 実言はその姿... 2020.03.29 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night14 実言は少し濡れた衣装のまま部屋に入ると、侍女たちが着替えを持って来た。奥から礼が出てきて、着替えを手伝った。「礼、起きていたのか」「ええ、少し書物をしていました」 着替えが終わって、奥の部屋に行くと、礼の言葉通り机の脇に灯台が点っている。し... 2020.03.26 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night13 北の空は黒い雲が立ち込めていた。あちらは雨が降っているのであろうと、都人は皆、北の空を眺めて言い合った。そして、やがてあの雲はこちらに来ると思って、皆が家路を急いだ。 稲妻が光ったのを見て、宮廷の官吏たちは恐ろしがった。しばらくして耳をつん... 2020.03.24 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night12 荒益と取り決めた通り、礼は椎葉家の別邸を月に二回訪れて、荒益の母の健康状態を診ている。三回目の訪問の時、礼が荒益の母と寝ている部屋で話をしていると、廊下に小さな陰がさした。礼は見逃さず、そちらに顔を向けると、荒益と朔の息子の伊緒理が屏風の陰... 2020.03.22 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night11 一人残った礼は、朔の走って行った先をしばらく見つめていた。 それから、碧妃の頼みを聞きに行った侍女の淑が戻ってきてもいい頃だと思い、階を登った。すると、階の上に立つ人の足が見えた。袴だから、男である。礼は驚いて顔が上げた。すると、そこには実... 2020.03.21 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night10 梅雨のある日、後宮の碧妃から礼に手紙が届いた。碧妃からの礼宛の手紙が直接礼に届くことはない。まずは実言に手渡された。実言が改めたあと、礼に渡されるといった具合だ。その手紙のことは、礼が寝所に入ってきたときに、先に入っていた実言が迎え入れて話... 2020.03.20 小説 Waiting All Night