2020-10

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night119

礼は少ないが花をつけた薔薇の庭の中に一人立っていた。  どんよりとした重苦しい雲が立ち込めて今にも雨が降ってきそうなこの日は、誰も庭には出てこない。  この庭は宮廷の端にあるため、周りを高い築地塀に囲まれている。築地塀には屋根を設えていて、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night118

実津瀬と蓮は体から力一杯声を出して泣いた後は、落ち着きを取り戻して母に甘え始めた。礼は二人を膝の前に座らせると水を飲ませた。泣き過ぎで目尻が赤くなった二人は、小さな手を椀に添えてごくごくと勢いよく飲んでいる。  それから三人で手を繋ぎ合って...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night117

謀反人春日王子の一味と思われたらどうしようか、と戦々恐々としている人物は少なくない。  それは、後宮も例外ではなかった。  大王の第三妃である詠は、与えられた館の外国風に設えた陶器を敷き詰めた庭先で椅子に座って庭の花や緑を眺めているが、心は...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night116

暁の頃だというのに、下級役人たちはいつもより早起きして、一目散に宮廷の門の前まで来るとそれが開くのを、列を成して待っている。みんな私語はしない。黙って周りを盗み見ている。周りの役人たちが何を考えているのか想像している。この隣の男も後ろの男も...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night115

「……礼……よく無事に戻ってきてくれた」  実言は礼の手を掴むとすぐに自分に引き寄せて、腕の中に抱いた。  まだ濡れている髪の間に指を入れて掴むようにしっかりと礼の頭を引き寄せた。 「……実言……ごめんなさい」  礼は実言にされるままに身を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night114

この大きな湖のほとりの土地で礼のするべきことは全て終わった。心はまだ朔の傍にいたいとも思うが、ここまで自分の我儘を通してきただけに後は夫と我が子のたち、そして、お腹の子のために都に戻る。そうと決めたら、間々代に帰ると告げた。  伊緒理はどう...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night113

礼は目を覚ました。  夜明け前かと思ったが、それにしてはまだ闇が深い気がした。何かを感じて、起き上がり隣に寝ている伊緒理を見ると、衾がめくれ上がって、そこに伊緒理はいない。礼は驚いて、衾から抜け出して立ち上がった。  衝立の向こうに目をやる...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night112

礼は邸に入ってすぐの部屋で横になった。礼の傍に座る伊緒理に、礼はその頬を撫でながら言った。 「あなたはお母様のところへ行きなさい。私は横になっていれば直に治るわ」  伊緒理は後ろの部屋を振り返った。 「お母様は眠っています……」 「私も少し...
物語あれこれ

第三部をここまで読んでいただきありがとうございます

みなさま、私の小説を読んでくださりありがとうございます! 第3部。長い話になりましたが、礼・実言対春日王子の因縁も何とか終わりを迎え、この物語の山を越えた感じです。しかしながら、物語はまだ続きますので、もうしばらくおつきあいください。 最初...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night111

目が覚めた。  とてもすっきりとした気分だと、伊緒理は思った。そして、自分の手の先を見たら、しっかりと握っていた。  母の手。  握りなおして、その手の感触をもう一度強く感じた。目を上げると母の横顔が見えた。白い顔。お母様はこんな顔だっただ...
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