2021-03

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小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章5

新しい年を迎えるにあたって、実津瀬は宮廷に片隅にある稽古場で一人汗を流していた。それは、新年の行事で舞を舞うのに、恥ずかしいものを見せられないという使命感からだった。  日も暮れて、松明が必要になるというところに我に返ったように練習をやめて...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章4

長く続く簀子縁を歩いてその角を曲がると、伊緒理の部屋の入り口につく。蓮はその入り口に近づくと、胸が痛くなる。これは嫌な痛みではない、嬉しさの伴う痛み。  蓮は角を曲がって、顔を上げた。 「ああ、蓮」  庇の間から簀子縁に出てきた伊緒理が蓮を...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章3

実津瀬は部屋の真ん中に寝転んで、ぼんやりと天井を見ていた。ともすれば、焦点はぼやけて、自分の意識の中に入り込んでゆく。  そんな自分を叩き起こすように、簀子縁をバタバタと走ってくる者がいる。 「実津瀬!」 「兄様!」  自分を呼ぶ声に意識は...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章2

「え、実津瀬、一緒に来ないの?」  岩城本家の末っ子である、鷹野が訊き返した。 「私はこれから、笛と踊りの稽古があるから、鷹野はお帰り」 「残念だな、今日はうちに面白い書物が届くから見ようと言っていたのに」 「そうなの?」 「今、異国の使節...
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