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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night9

数日後、寝るために寝所に入った実言は遅れて入ってきた礼に手紙を差し出した。「お手紙?」 礼は、その手紙を受け取って目を通した。差出人は椎葉荒益であった。実言に、礼を我が母に遣わしてくれることのお礼がしたためられていた。「返事は送ったから、近...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night8

実言は以前ほどの忙しさはなくなったようで、外泊の回数はめっきり減った。 礼は、子供達と供に夫との時間を喜んで過ごした。礼には平穏な日々であった。 ある日、実言が苦笑いしながら部屋へと入ってきた。蓮の人形遊びに、実津瀬と礼が付き合って、着物を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night7

春日王子はおもむろに卓子から立ち上がると、大王の前に進み出る。「春日よ」 近寄ってくる弟に大王は微笑んで応えた。「兄上。この良き日に、兄上にお目にかけたい人物がおります」「ほう。それは誰かな?」 大王は機嫌よく、興味を引かれて目を見開いた。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night6

四月、花の宴は都の東の外れに位置する山の麓にある翔丘殿という離宮で盛大に行われた。 宮殿の周りには錦の幕を張りめぐらせ、旗を立てているので、宴の場所は遠くからでもわかった。 正殿の正面には舞台を設え、楽団や舞踊の演者達が行き交いしている。正...
物語あれこれ

第三部 書き始めました!

まるで「冷やし中華始めました」のような題名ですが、何の風物詩でもありません。第三部 Waiting All Night をゆっくりペースですが、書き始めました。読んでくださるみなさまが、どんな話になるのだろうと、楽しみにしていただけたら嬉し...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night5

昨年、大王は北方の征夷を達成した。 その部隊の帰還を祝う宴は盛大に行われたが、今年に入ってもその祝勝の雰囲気は収まらず、大王も何かと行事は盛大に行うことを求めておられる。新年の祝賀も大掛かりに行った。臣下たちもそれを感じ取って、春に開催する...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night4

実言が従五位の位を授かり、左兵衛府の次官に任ぜられたことで、仕事は絶え間無く続いて、忙しいのだろうと礼は思っていた。 夜は遅くまで仕事をし、また宮中の宿直もあり、仕事の打ち合わせで上司の邸に行かなければならないこともある。だから、独り寝の続...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night3

「礼!」 いち早くしずしずと歩み寄ってくる礼を見咎めて、碧妃が声を上げた。「碧様」 礼は破顔して碧妃の前まで行き、設えられた場所に座った。「お久しぶりでございます」「本当に!早く会いたかった」 供の淑は礼の後ろにぴったりとついて座って、皆が...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night2

礼は鏡の前で化粧をし、実言が贈ってくれた簪や紐を組み合わせて横の髪を高く結い上げて、後ろの髪はそのままたらした。控えめな色だが織りから浮き出てくる模様が美しい背子を着て、袍も落ち着いたものにしたから、添帯は少し派手にしてはどうかと侍女の澪が...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night1

季節は初夏。 その庭には緩やかな日差しが差し込み、木が青々と繁り、大小の美しい花が咲き誇っている。 この庭がある岩城邸の離れの館の主の妻である礼は、双子の子供、実津瀬と蓮と庭で花や草を摘んで遊んでいた。今も摘んだ花の名前を教えて、礼の後に同...
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