wildflower

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小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower23

日々は淡々と過ぎて行き、すぐに一月の終わりを迎える。出征の前日、実言はみんなで夕餉を食べることにした。礼はいつもより豪華な食材を取り寄せるように言って、膳にはアワビや川魚などのご馳走が載った。忠道や耳丸、縫に澪たち従者、侍女が同じ膳を囲んで...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower22

一月の半ばまで宮廷の行事が続き、大臣である園栄をはじめとして岩城家は忙しかった。宮廷の行事が恙無く終わったところで、それを労うために、岩城家の広間で宴会を催して大いに飲み食べて、正月の忙しさは一段落を終えた。 実言は一月の終わりに北方の戦に...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower21

新年を迎える前に、礼に標(しるべ)の帯を巻く着帯の儀式を行うのに伴って、束蕗原から去が都へやってきた。 お腹の子が無事に育つように祈願し、祝いの膳が振る舞われた。 ごく身近な者の集まりで、縫や澪、忠道や耳丸たちも上下なく食事を饗した。「去様...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower20

その夜、寝る前に実言は机に向かって書き物をしていた。礼も近くで縫い物をしている。実言が南方の戦に行っていた間の束蕗原での生活は、礼にいろいろな生活力をつけてくれた。縫い物もその一つで、今、お腹のややが生まれた時に着せるための産着を縫っていた...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower19

礼の体は、妊娠したと自覚したら急につわりの症状がでた。吐き気で、何を食べても吐いてしまう。体もだるくて、眠い。実言が春日王子の宮から帰った翌日、礼は体を起こすことができなくなった。七日が立ち、礼は食事できず痩せていくので、縫も心配する。「実...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower18

岩城の邸に戻ると、母屋から離れに向かった。母屋と離れをつなぐ渡り廊下の離れ側で澪が待っていた。 時刻は巳刻(午前十時)になる頃である。「どうかしたのか?」 一目見て、澪の顔色が悪いのがわかる。「はい」 返事をするだけで具体的なことを言わない...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower17

実言は礼が眠ったのを確かめて、添い寝していた体を起こして、縫を呼んだ。 隣の間に控えていた縫が現れた。 実言は寝所を囲んだ几帳の中から出て、縫に礼の体のことを話した。「私、気がつきませんでした。申し訳ありません。ああ、なんとおめでたいことで...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower16

春日王子は礼の右側に倒れ、礼の胸と足の上には王子の腕と足を乗せたままになっている。 礼は王子の手足を載せたまま、王子の寝息を聞いていた。そこで初めて涙を流した。声を上げないように、唇を噛み締めた。露わになったままの乳房をそっと肌着の襟を掴み...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower15

よりによって我が体内に子を宿したことを知ったその日に、このような話があるとは。 春日王子とは、前に詠妃のこの館に来たときに、ちょうど退出される場に行き合わせた方。また、月の宴のときに大王の部屋から出ていらして詠様のいる部屋へと向かわれるお見...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower14

月の宴が終わって、しばらくは礼にとっては穏やかな日々が続いた。 九月に入ると台風が来て、都も風や雨によって建物の被害が出た。宮廷は至急の対応を迫られて、岩城家も宮廷へ出て忙しい日々を送った。 十一月になると、新嘗祭の準備で忙しくなる。今年は...
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