小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night127 最終回

冬と言ってもまだ雪は降らないだろうと言い合っていたのに、その朝は一段と寒くなって雪が降った。  朝、侍女達は部屋の中から蔀を押し出すのに、手を置いた時にその冷たさで外の様子を察することができた。一度手を離して、口元に手の平を広げて、自分の息...
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Infinity 第三部 Waiting All Night126

礼は実言が寝る部屋の隣に寝所を作って、そこで寝た。起きたらすぐに几帳をくぐって実言の様子を窺った。  夫は人形が寝ているような置かれたままの姿を見せている。  起きてすることは昨日と同じだ、水や薬湯を飲ませて、体を拭き、傷口を洗って薬を塗り...
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Infinity 第三部 Waiting All Night125

礼は目覚めた。目を開けたら、天井が見えた。白々とした明かりが梁の線を鮮明に見せていた。隣をみると、真っすぐに上を向いて寝ている夫がいた。それは、昨夜多くの人の手を借りて、王宮から連れ帰った夫であるが、寝返りを打つこともなく礼が添い寝をする直...
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Infinity 第三部 Waiting All Night124

翌日も礼は体が求めるままに寝た。目が覚めた時には、陽はとっくに高くまで上がっており、外では実津瀬と蓮が邸の子供達と遊んでいる声が聞こえた。礼は起き上がると、縫がやってきた。昨日と同じように、薬湯を飲み、粥を食べると、促されるまま横になってま...
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Infinity 第三部 Waiting All Night123

翌日、礼は天高く陽が登った頃に、目を覚ました。礼は何刻だろうと、身を起こすと、庇の間の衝立から縫がひょっこりと顔を出した。澪も縫も、礼が自然に目を覚ますの待っていた。 「お目覚めですか?」  そう言って、礼に近づいてきた。 「ご気分は?」 ...
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Infinity 第三部 Waiting All Night122

両手を赤く染めて戻ってきた礼に、付き添いの者が待機する部屋から出て来た澪は血相を変えて駆け寄ってきた。 「礼様!どうなさったのです!どこを怪我されたの?手の平?それとも、腹ですか?どうしてこんなことに!」  礼の顔は真っ青だが、飛んだ血が頬...
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Infinity 第三部 Waiting All Night121

「耳丸……もっときつく縛ってくれないか」  実言は耳丸の肩につかまって、近道である後宮側から宮廷に行く途中に言った。周りは慌ただしく、先に王宮への取次に走る者、弾正台への取次に走る者と、指示とそれに対応する役人が右往左往している中である。 ...
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Infinity 第三部 Waiting All Night120

詠妃は自分の身ばかりを案じていたが、そこで初めて自分の行動が最愛の息子である葛城のその身を危険にさらしたのだとわかった。  ここに来て岩城一族の最大の狙いは次の次の大王を誰にするかに移ったのだ。春日王子が亡き後、大王の位は、文句なく大王の息...
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Infinity 第三部 Waiting All Night119

礼は少ないが花をつけた薔薇の庭の中に一人立っていた。  どんよりとした重苦しい雲が立ち込めて今にも雨が降ってきそうなこの日は、誰も庭には出てこない。  この庭は宮廷の端にあるため、周りを高い築地塀に囲まれている。築地塀には屋根を設えていて、...
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Infinity 第三部 Waiting All Night118

実津瀬と蓮は体から力一杯声を出して泣いた後は、落ち着きを取り戻して母に甘え始めた。礼は二人を膝の前に座らせると水を飲ませた。泣き過ぎで目尻が赤くなった二人は、小さな手を椀に添えてごくごくと勢いよく飲んでいる。  それから三人で手を繋ぎ合って...
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