小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章18 邸の蓮の部屋で二人きりといっても、どこに他人の目があるかわからない。だから、おそるおそるの気持ちもあるのだが、ここにはその心配はない。 景之亮が蓮に体を向けた。蓮が景之亮を見上げると、景之亮は右頬を蓮の左頬に寄せた。 最初の頃は、髭の伸びた... 2022.07.16 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章17 厩に行くと、鞍を載せた二頭の馬の準備がしてあった。 景之亮は蓮が馬に乗るのを手助けし、馬上で蓮の体が落ち着くと、自分はひらりと軽い身のこなしで馬上へと上がった。 さすがに警備の仕事で馬に乗り慣れているだけある。美しい乗り姿に蓮は見惚れていた... 2022.07.09 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章16 珍しく実津瀬は机について書物を読んでいた。 新年を迎えたら、正式に宮廷に出仕すると言われている。今はより心して勉学に励む時だと、真面目に取り組んでいた。そこに、静かに簀子縁を歩いてくる音がする。 実津瀬は身が入らないせいか、すぐに気づいて顔... 2022.07.02 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章15 「芹様!」 慌てて芹の一歩前を歩いていた従者は手を出した。突き出た石に足を取られて前のめりになった芹の体をすんでのところで受け止めた。「ああ、ぼおっとしていたわ」「歩きなれないので、仕方ありません」 そう言って、従者は芹がしっかりと立つまで... 2022.06.25 小説 あなた
旅 【旅】京都 青もみじツアー 今回は京都の青もみじを中心に観光してきました。はじめにコロナ禍の中で行動制限のないゴールデンウィークも終わり、5月病になりそうな日々、何か楽しみを得たいと考え、「そうだ!京都に行こう」ということで、今回「京都、青もみじツアー」を行ってきまし... 2022.06.19 旅
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章14 佐田家の別邸は都の南にあり、邸の周りはのどかで、小さな森が点在し、作物を育てている畑があった。そのため、人通りも少なく、芹は畑を作る母親と子供の二人連れとすれ違っただけで、後は誰とも出会わなかった。 従者が門を入って訪いを告げると、すぐに人... 2022.06.18 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章13 芹の心は落ち着かない。 それは、岩城実津瀬から「待っていて」と言われたこと……。待っていたくないのに、待つしかない。 毎日毎日、誰かが部屋に入ってくると、何かあるのではないかとびくびくしている。 今も、簀子縁をこちらに歩いてくる音に、もしや... 2022.06.12 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章12 翌日、実津瀬は夜明けとともに起きると、昨日と同じように宮廷見習いとして働いて、一旦邸に帰って来た。身だしなみを整えていると、蓮が庭から声を掛けてきた。「あれ、実津瀬?塾は?」「今日は行かない。今から出掛けるんだ」「え?どこへ?」「ちょっとね... 2022.06.04 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章11 「えー!実津瀬!どういう風の吹き回しだ?」 塾の帰り、鷹野は実津瀬の言葉に驚きの声を上げた。 「笛を吹きに行きたくなってね」 実津瀬が明日の踏集いに一人で行くと言い、その理由を訊ねた答えが先ほどの笛が吹きたいだった。それは嘘だと、鷹野は疑い... 2022.05.29 小説 あなた
小説 あなた New Romantics 第一部あなた 第三章10 その翌日、景之亮が実言邸にやってきた。景之亮が来たことは侍女たちを通じてすぐに蓮に伝わっているが、景之亮は例によってこの邸の主人である実言に挨拶をしてから蓮の部屋に来るため、すぐに会えるわけではない。 昨日、景之亮様は王宮と宴会の場である佐... 2022.05.21 小説 あなた