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小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第ニ章18

あれは、新年の行事も終わって宮廷全体がほっとして花の季節前の少しばかりのゆったりとした時間を過ごしているときに、岩城実言が左近衛府の詰所にふらりと現れた。岩城実言の顔はよく知られていて、すれ違う者は皆、小さな会釈をして行く。 景之亮は机につ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章17

実津瀬は使用人の寝泊まりに使っている棟の中を端まで走ると、簀子縁に出て近くの階を下りた。 表と裏の門以外に夫沢施の館から出る門はあっただろうか。夫沢施の館は全てを高い塀に囲まれていて簡単には出られない。使用人が近道する通用門があっただろうか...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章16

夫沢施の館の裏門を入った実津瀬は迷わず左手に進み、母屋の裏にある使用人たちの寝泊まりする棟の方に進んだ。宴が終わった後の喧騒が右側にある台所や支度部屋から聞こえてくる。前日からの準備と本番の緊張から解き放たれた使用人たちは、残った料理や酒に...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章15

夫沢施の館で行われる夏の宴は、心配していた天気にも恵まれて夕闇の頃には夫沢施の館に大王、大后を始め王族を迎えることができた。 ちょうど西に赤く焼けた空が追いやられて、東の空からは濃い闇に覆われた頃、篝火の爆ぜる音の中、大王と大后が正面の席に...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章14

月の宴の前日。 実津瀬は予行のために塾が終わると、宴の会場となる夫沢施の館に向かった。すでに宮廷の楽団が組みあがった舞台の上を行ったり来たりしている。 実津瀬が舞台の下まで行くと、師匠の麻奈見が上で指示をしている姿が見えた。「麻奈見様」  ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章13

雪と会うことを許すかのように降り続いた雨は止んだ。晴れ渡った青い空が頭上に広がった。いつもの約束の場所に先に来たのは実津瀬だった。稽古場で久しぶりに舞の練習をしてから、速足でここまで来たのだった。 随分と間が空いたから雪に会えると思うと気持...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章12

久しぶりに本家から当主の蔦高が実言のところに来た。父について稲生と鷹野も一緒にやってきた。追って鷹取景之亮が実言の邸を訪れたので、何かしらの密談があるのかもしれない。しかし、実津瀬はその内情を知らされていない。 実津瀬の部屋で実津瀬、稲生と...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章11

そんな出来事があった翌日、次に本家の稲生が事件を起こす。 少しばかり前に本家の庭に同年代の男女を招いて小さな宴を開いた。宴の本当の目的は稲生が心を寄せる和良家の娘、絢と会うためのものだった。皆が楽しく談笑しながら庭を愛でている間に二人はどこ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章10

「実津瀬、夏の宴で舞を舞う依頼が来たよ」 実津瀬は机を出して書物を読んでいたところに、ふらっと現れた父の実言から言われた。 宮廷楽団と一緒に舞の練習をしていた際、楽団を引っ張る楽長の麻奈見からそれとなく舞の依頼について言われていたから、それ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章9

宮廷での行事や宴が立て込んで、下働きの者を入れたためにいつも使っている宿舎の空き部屋を探し当てるのに少し苦労した。 やっと見つけた部屋で、誰にも聞かれないように、とひそめてもそれは静かな熱とともに漏れる。 実津瀬は雪に足を開かせて自分の腰の...
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