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小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第ニ章10

「実津瀬、夏の宴で舞を舞う依頼が来たよ」 実津瀬は机を出して書物を読んでいたところに、ふらっと現れた父の実言から言われた。 宮廷楽団と一緒に舞の練習をしていた際、楽団を引っ張る楽長の麻奈見からそれとなく舞の依頼について言われていたから、それ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章9

宮廷での行事や宴が立て込んで、下働きの者を入れたためにいつも使っている宿舎の空き部屋を探し当てるのに少し苦労した。 やっと見つけた部屋で、誰にも聞かれないように、とひそめてもそれは静かな熱とともに漏れる。 実津瀬は雪に足を開かせて自分の腰の...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章8

蓮は机の前に座って、束蕗原から届いた薬草の本を開いていたが、ぼんやりと前を見ていた。 誰のために写本をしたらいいのか。それは、母のためであり、束蕗原の去のためであるのだが、気持ちが入らない。 蓮は筆を持つ気にならず、膝の上に両手を置いて、開...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章7

桜の花びらが枝から離れて岩城実言邸の大きな池に浮かんだ。 束蕗原から来ている医術見習いの女と蓮は薬草園の隣に建っている小屋で薬草作りをしていた。二人ですり潰す作業をして小屋から出ると、薬草園の裏から宗清の威勢のいい声が聞こえた。実津瀬が舞や...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章6

気が進まないといいつつも、その日が来ると蓮はそわそわして朝から落ち着かない。朝餉の粥も半分しか喉を通らなかった。 父から会わせたい男がいると言われてから、蓮は毎日衣装を入れた箱の前に座って、開けては中を出して並べ、再び入れたりしている。昨日...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章5

蓮は束蕗原から届いた薬草に関する本を写すために机の前に座っていた。筆を取ったけど、なかなか紙の上に筆を置く気にならなかった。 それは、兄の実津瀬の様子がおかしいことが気になっているからだ。 どうしたのだろう? 部屋に閉じこもって、舞や笛の練...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章4

実津瀬は邸に戻って自室に入った。夕餉時に弟の宗清が一緒に食事をしようと誘いに来たが、疲れているからいらないと言って追い返した。誰とも話がしたくなくて夕餉を取らずに衾を被った。稲生達といても、別れてからもこの邸にたどり着くまで、どのように歩い...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章3

春の花がたけなわの時に盛んに宴が開催される。一番大きなものは大王が主催する宴だが、貴族たちも小さいながら王族を招待するものから親族や友人を呼ぶ小さな宴を開催している。庭の景色を楽しむだけではなく、音楽や舞の余興をしたいというところがあって、...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章2

蓮は今日も夜明けとともに起きて薬草園の中にいた。 兄が連れて行ってくれた小高い丘から伊緒理を見送った翌日も、泣き腫らして目が開かなくても起きた。柱に足をぶつけてしまい、しばらくその場にうずくまることがあったが薬草園で作業をした。 吹っ切れた...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章1

実津瀬は一人、宮廷の庭の椿の樹々の陰に立っていた。 いつも雪の方が先に来ていて待たせる身だったが、今日は実津瀬が待つことになった。 実津瀬の心の中には、雪が地位のある男と親密そうに話している姿が脳裏に浮かび、そのことが波ように繰り返し押し寄...
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