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小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章19

実津瀬は久しぶりに会った妹弟たちと楽しく過ごした後、早々に褥の上に横になった。 王宮での有馬王子との小さな会合の後に見た雪と男が話している様子が頭の中から離れない。蓮が伊緒理のことで落ち込んだり、束蕗原に行ったりした時はそれはそれで気になっ...
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New Romantics 第一部あなた 第一章18

翌日、蓮は母や妹弟たちと一緒に日の出とともに車に乗って都に帰って行った。 都に帰れば、父から強い叱責があると思った。大王に謁見するために大路を行進する行列を乱すような行為をしたのだから、何かしらの罰を受けている可能性がある。それを父から言わ...
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New Romantics 第一部あなた 第一章17

母が束蕗原の去様の邸で使っている部屋に行くと、母と妹弟たち皆が輪になって薬草の取り合いをしていた。これは、母がよくやる遊びであるが、ある薬草の特徴を言って、その薬草は何かを当てる遊びである。小さな宗清と珊が一生懸命に薬草に飛びついている姿が...
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New Romantics 第一部あなた 第一章16

蓮は夕餉を食べ終わるとすぐに褥に横になったが、目を瞑っても眠ることはできなかった。やっと眠っても、夜明けとともに目が覚めて、邸の一画にある薬草園に向かった。母の礼がいなくても束蕗原から来ている去の弟子たちが薬草園の管理をしているから蓮が何か...
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New Romantics 第一部あなた 第一章15

約束の日に雪は椿の樹の影に隠れて待っていた。「待たせたかな?」 実津瀬が椿の樹の影に周って雪を見つけて言った。 雪は顔を上げて、すぐに顔を綻ばせた。「いいえ」 雪は答えた。 前回、偶然この石畳の回廊で会って、お互いの気持ちを再び確かめあった...
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New Romantics 第一部あなた 第一章14

蓮は机に向かって、本の続きを写していた。 父と一緒に束蕗原から帰るのに唯一持って帰って来たものだ。例によって、母と……伊緒理がいつでも読めるようにと写している。 伊緒理……にこの本は必要かしら……。 いや、違う。本を写す私は必要かしら……こ...
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New Romantics 第一部あなた 第一章13

「実津瀬!」 今、この邸にいるはずのない人の声がして、実津瀬は寝転がっていた体を起こした。 二日続けて塾を休むのは良くないと、実津瀬は早朝に宮廷の見習いの仕事の後、塾に行った。 昨日、真面目な実津瀬が来なかったこと心配してか、多くの人から声...
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New Romantics 第一部あなた 第一章12

今日、父が束蕗原に行っていてよかった。 実津瀬は、心からそう思った。 邸に家族は誰もいない。自分の様子が変でもそれを何かといってくる者はいないのだ。 雪と別れる前に背を向けて袴をつけ直し、脱いだ袍に袖を通して帯を締めた。雪は、単衣を肩に掛け...
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New Romantics 第一部あなた 第一章11

束蕗原に岩城実言が到着した。従者二人を連れて、馬を飛ばして都の北東にあたるこの地に来たのだ。 去の邸の離れにいる礼や蓮たちに、館の使用人からすぐに連絡が入った。宗清は久しぶりに会う父の到着に喜び、簀子縁をわき目も降らずに走って行った。それを...
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New Romantics 第一部あなた 第一章10

雪が言った明後日のその日、実津瀬は雪と会うということが決まっているだけだというのに、変に体に力が入ってしまう。意識しなければ、右手右足を同時に出して歩いてしまいそうになる。 女人に心を囚われるとこんなことになってしまうのか、と実津瀬は内心自...
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