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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night122

両手を赤く染めて戻ってきた礼に、付き添いの者が待機する部屋から出て来た澪は血相を変えて駆け寄ってきた。「礼様!どうなさったのです!どこを怪我されたの?手の平?それとも、腹ですか?どうしてこんなことに!」 礼の顔は真っ青だが、飛んだ血が頬につ...
物語あれこれ

【小話】朔と実言

朔は落ち着かない心で、部屋の真ん中に座っている。いつもはそんなことをしないのに、じっと自分の指を見ている。 落ち着かないのは……だって、今から実言がここに来るんだもの。 先ほどまで朔の住まう邸で婚約の儀を執り行っていた。そして、今から朔の部...
物語あれこれ

ゴールはもうすぐ

こんにちはここまで「Infinity」という物語を読んでくださった皆さま、ありがとうございます。もうお気づきの通り、この物語は最終盤です。言ってしまえば、あと6話で終わります。書いた自分が一番寂しい気持ちになっています。書き終わったら、何を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night121

「耳丸……もっときつく縛ってくれないか」 実言は耳丸の肩につかまって、近道である後宮側から宮廷に行く途中に言った。周りは慌ただしく、先に王宮への取次に走る者、弾正台への取次に走る者と、指示とそれに対応する役人が右往左往している中である。 妻...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night120

詠妃は自分の身ばかりを案じていたが、そこで初めて自分の行動が最愛の息子である葛城のその身を危険にさらしたのだとわかった。 ここに来て岩城一族の最大の狙いは次の次の大王を誰にするかに移ったのだ。春日王子が亡き後、大王の位は、文句なく大王の息子...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night119

礼は少ないが花をつけた薔薇の庭の中に一人立っていた。 どんよりとした重苦しい雲が立ち込めて今にも雨が降ってきそうなこの日は、誰も庭には出てこない。 この庭は宮廷の端にあるため、周りを高い築地塀に囲まれている。築地塀には屋根を設えていて、回廊...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night118

実津瀬と蓮は体から力一杯声を出して泣いた後は、落ち着きを取り戻して母に甘え始めた。礼は二人を膝の前に座らせると水を飲ませた。泣き過ぎで目尻が赤くなった二人は、小さな手を椀に添えてごくごくと勢いよく飲んでいる。 それから三人で手を繋ぎ合って歌...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night117

謀反人春日王子の一味と思われたらどうしようか、と戦々恐々としている人物は少なくない。 それは、後宮も例外ではなかった。 大王の第三妃である詠は、与えられた館の外国風に設えた陶器を敷き詰めた庭先で椅子に座って庭の花や緑を眺めているが、心は落ち...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night116

暁の頃だというのに、下級役人たちはいつもより早起きして、一目散に宮廷の門の前まで来るとそれが開くのを、列を成して待っている。みんな私語はしない。黙って周りを盗み見ている。周りの役人たちが何を考えているのか想像している。この隣の男も後ろの男も...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night115

「……礼……よく無事に戻ってきてくれた」 実言は礼の手を掴むとすぐに自分に引き寄せて、腕の中に抱いた。 まだ濡れている髪の間に指を入れて掴むようにしっかりと礼の頭を引き寄せた。「……実言……ごめんなさい」 礼は実言にされるままに身を委ねた。...
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