小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night49 すっかりと身なりを整えた春日王子が、来客用に使っている部屋の手前の庇の間に入ると、中から大きな声が聞こえてきた。「春日王子はまだか!どれほど待てというのか?本当に、こちらにいらっしゃるのだろうな!」 大人しい哀羅王子が声を荒げている。それを... 2020.06.19 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night48 怖いほどの静寂だ。自分の耳が聴こえなくなってしまったかと、思うほどに。「……どうした?」 その声に、耳が聴こえなくなったわけではないことを確認した。 朔は自分が息を止めて身じろぎもせず、じっとしていたのだと知った。隣に横になっていた方に声を... 2020.06.15 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night47 礼が侍女の澪に髪をといてもらっている様子を、娘の蓮は後ろから右に左に横歩きして見ている。髪を結いあげて、礼が唇に紅をのせて化粧を終わらせたところで、我慢しきれずに礼の傍にやってきた。「お母さま、きれい」 と言って、礼の肩に頬を寄せて抱き着い... 2020.06.14 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night46 今も、春日王子の邸で、酒の相手をしながら春日王子の言うことに耳を傾けていてた。 再び体調を崩された大王は、今は持ち直し小康状態である。寝付かれることはなく、儀式も執り行い、春日王子が代役をすることもない。しかし、気分がすぐれないと大事を取っ... 2020.06.12 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night45 手元の杯の酒は一向に減らない。口まで持っていっても、唇を湿らせるだけで、口に含むところまではいかないのだ。 哀羅王子は、杯を握ったまま、父から受け継いだ邸を出て吉野に行き、また吉野から都に帰って来た十五年の長き日々を思い出していた。 十四の... 2020.06.07 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night44 宮廷の門を出ると、荒益は真っすぐに邸に帰っていった。二条の西にある邸までの道のりは、先ほど実言に訊かれた朔のことを考えるのによい距離だった。 宮廷で妻の朔は何をしていたのだろう。 平静を装って、姉である幹妃の用事を手伝ったのだろうと言ったが... 2020.06.06 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night43 宮廷では、話が漏れ聞こえるのを防ごうと部屋をどれだけ隔てても、それは難しいことである。使用人たちの情報収集力は恐ろしいもので、どれだけ小声で話しても、誰かの耳が聞きとって、口から口へと伝えられていくのだった。 その日の朝の大王の突然の体調不... 2020.06.03 小説 Waiting All Night
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night42 宮廷の奥では、大王の健康について再び問題になっていた。 朝餉を召し上がられた大王が突然気分を悪くされて、食べたものは全て吐き出されて横に転がり苦しまれた。息も絶え絶えの中で。「春日を…呼べ」 とおっしゃった後、褥の上に臥せられた。次に目を覚... 2020.05.31 小説 Waiting All Night
私の生活 iPad Pro 買いました iPad Pro 11インチを買った!私にとってはこんな変化がありました!というお話です。新型コロナウイルスの影響で、もう以前の生活には戻れない、という世の中になってしまいましたが、以前の生活より良くなったこともたくさんあると思います。ひと... 2020.05.30 私の生活
小説 Waiting All Night Infinity 第三部 Waiting All Night41 哀羅王子は、老爺に案内させて敷地内にある倉の前にいた。 哀羅王子や邸の少ない使用人たちの生活は苦しく、昨日から哀羅王子に出す食事も粟と芋を一緒に煮た粥だけになった。着る物だけは、宮廷に赴くために上等なものを春日王子からもらっていたが、邸の者... 2020.05.29 小説 Waiting All Night