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小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章17

もう、水の中に落ちる前と変わらない生活ができているのに、母である礼は今も心配して、蓮が目の前の食事に手をつけないでいると、手づから匙で粥をすくって蓮に食べさせようとする。 「お母さま、私は自分で食べられます」 「だって、椀を持たないから食欲...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章16

ピーっという音がした。  人は鳥の鳴き声と思うかもしれが、露には区別できた。  男が来たのだ。  露は妻戸を静かに開けて顔を出した。侍女たちが寝る建物の前に並ぶ大きな杉並木の一番遠くの樹の陰から男が顔を覗かせた。  夕方のあたりが暗くなり始...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章15

翌日、実津瀬は夜明けと共に邸を出て宮廷に向かった。  四日間溜まった自分の仕事を片付けようと意気込み、机について精を出していると、あとから出仕してきた同僚から、大変だったねと声を掛けられた。  実津瀬が休暇を取る理由を父の実言は自分の代わり...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章14

これまでも夫婦仲がよいことは周りの誰もが認めるところだったが、月の宴での舞の対決が終わった後はそれまでにも増して実津瀬と芹の仲睦まじいさは目立った。それは実津瀬が舞の対決に勝利したのは芹の支えがあったからだと、改めて芹に感謝し、さらに愛情が...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章13

季節は夏から秋へと変わった。あの洪水の日からふた月が経とうとしていた。  洪水は束蕗原の風景を一変させてしまった。山崩れが起こり、作っていた稲や畑は水に覆われ、引いた後には大量の土、砂、石が残された。村人の家、そして命を奪った。しかし、住人...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章12

意識は戻ったものの、蓮にとってあの一夜の経験は壮絶なものだったようで、隣で寝起きしている礼は、夜中に蓮がうなされている声に飛び起きた。  近づいて、そっと額に手を置くと熱く、たくさんの汗をかいている。  庇の間には侍女の曜が寝ていて、すぐに...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章11

誰かが私の手を取ってくれた?  寒くて手足の感覚ないから、よくわからない。  蓮……って呼んでくれている?  私を知っている人かしら……。  ……諦めるな。……諦めるなよ、蓮……。  ……はい……諦めない……諦めないわ……  蓮は誰かに体を...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章10

「見たところ、顔や手、足に擦り傷……そして、足に打ち身……。流れてくる樹の枝などが当たったのだろうね……」  去はそっと蓮の体を触って言った。 「それにこんなにも体が冷たいですよ」  曜は蓮の手や足をさすった。  それは去もわかっていて、し...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章9

「蓮!れーん!」  伊緒理は腹の底から力いっぱい声を出して蓮を呼んだ。 「れーん!返事をしておくれ!」  声を出した後は、耳を澄ました。自分の声を聞いた蓮が応えてくれる、という希望を持って。  未刻(午後二時)を回った頃だった。  長年傍で...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章8

去の館に避難してきた者たちは皆、雨に打たれることなど気にすることなく、本道を遡ってくる水が迫って来る前に立ち止まって、声もなく目の前の水の流れを見つめている。  昨日まで目の前に見えていた光景は、もう記憶の中にしかないのだ、と黒い水を前にし...
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